これからのECサイト ~人材不足によるサイト運営が困難に~

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厚生労働省から発表される有効求人倍率からも分かるように、採用マーケットは依然として人材の売り手市場となっています。
(2019年5月で1.63倍

有効求人倍率とは=有効求職者数に対する有効求人数の割合。
1を基準として、下回れば求職者が多くなり(供給超過)、上回れば企業の求人が多い(需要超過)という経済指標。

「1.63倍」というのは46年ぶりの数値で、戦後の高度成長期以来の高水準となりました。高い求人倍率は好景気を示す指標として好感される事が多い反面、企業にとっては人材獲得競争が激しくなるため手放しでは喜べない、切実な問題です。
今や人手不足というのは国レベルの課題ですが、今回はEC業界における人材登用と業務効率化について述べたいと思います。

EC業界で必要な人員の例

そもそも、EC業界で必要な人員(職種)にはどんなものがあるのでしょうか?ごく代表的なものとして、下記の7つを挙げてみました。

  • 【1】商品企画
  • 【2】サイト構築(作成)
  • 【3】広告運用(プロモーション)
  • 【4】仕入れ
  • 【5】受注処理〜在庫管理
  • 【6】出荷・配送
  • 【7】アフターサービス

このように一概にECサイトでの仕事といっても、業務は細分化されるため、求められるスキルセットやノウハウも異なってくるのがお分かりいただけるかと思います。
ごく一部の大規模な企業では【5】【6】をオートメーション化するなどして人材不足を補っているケースはありますが、多くの企業では【1】〜【7】をクロスオーバーして業務を行なっているケースがほとんどではないでしょうか。また、【1】商品企画【2】サイト構築【3】広告運用については、特に高い専門性が求められます。

【1】商品企画
ECサイトが激増し、扱う商品のジャンルも多岐にわたっていく中で、「ヒットする商品を考えなければいけない」「売れる商品を探し出さなくてはいけない」といった特殊な能力やセンスが必要になります。

【2】サイト構築
すでに多方面から指摘されているように、日本は慢性的なエンジニア不足です。対策としてSaaSモデルのECサイト構築サービスもありますが、それでは他社との差別化がしにくいため、競争を制して大きな売上を上げることは困難です。そのため、「魅力的な自社サイトの構築ができる人材の確保が売上を左右する」と言っても過言ではないでしょう。

【3】広告運用
新しい手法を使いこなし、情報のアップデートが常に求められる広告・宣伝業務もとても重要です。広告には多大な予算が使われることも多いので、斬新な発想を持ち、トライアル&エラーを続けられる人材が必要となってきます。

また、最近では配送対策も急務とされています。運送業界も同様に人手不足のため、運賃高騰と配送遅延が深刻化しているのです。
某家電量販店では、配送先が都内の場合は自社スタッフに配達をさせることで「送料無料で迅速な配送サービス」を担保しています。一方で「商品代金が◯円以下の場合は送料を有料にすることで配送サービスの劣化を防ぐ」という考え方をしている会社もあって、状況に応じてフレキシブルな対応が求められています。

このように、業務の膨張化や頻発する課題に対応できる人材登用の成否が会社のパフォーマンスに直結していく状況になっています。単に商品力の優劣だけを追い求めていては、激化する競争下で生き残っていくのは難しいでしょう。

テクノロジーの力で効率化

しかしながら、そのような優秀な人材の登用は多くの資金と時間を要するばかりでなく、リソースを無尽蔵に投入したところで確実性を担保することはできません。そこで「テクノロジーの力で業務の効率化を」というサービスが登場するわけですが、その中でも代表的なものといえば「RPA(Robotic Process Automation)」ではないでしょうか。

「RPA(Robotic Process Automation)」
RPAとは、PCなどで行っている一連の事務作業を自動化できる「ソフトウェアロボット」で、業務効率化や生産性向上を実現するテクノロジーとして導入する企業が増えています。例えば、以下のような業務の自動化が期待できます。

1.複数モールの商品マスタ作成
2.会員情報更新
3.受注データ取得、出荷指示、ステータス更新
4.レポート作成

RPA導入に際しては、「運用業務の洗い出し」「最適な業務プロセスの再設計」といった作業が必須となるため、結果として会社全体の体制・人員の最適化が実現される効果も見込めます。また、従来の業務手順はそのまま取り入れることが可能なので、導入や受容のハードルが低く、利便性を実感できるのも魅力です。

利便性・生産性の向上が期待できる一方で、注意すべきポイントもあります。
それは、RPAのようなテクノロジーを導入しても「一挙にフル自動化ができるわけではない」ということです。
当然のことですが、業務にはいち部門やいち担当者では完結できない事も数多く存在します。ときには組織を横断した大規模な変革が必要になるケースもあるでしょう。たとえば部門Aが業務効率化のためにRPAを導入すると、自部門が担当している業務一覧のプロセスが検討対象となります。自動化することである1つの作業効率は向上しますが、けっして全社的な業務プロセスの見直しが行われるわけではありません。ここに落とし穴があり、組織の歪みの原因となる可能性があるため、注意を要します。もっとも大切なことは、業務プロセス全体の見直しであり、あるべき姿を再考することなのです。

現在日本国内でRPAを提供している企業は複数社ありますが、「自社の規模に合った機能・価格か」「カスタマイズ性はあるか」「社内で運用できるのか」といった点を十分に考慮した上でサービスの選定を行い、テクノロジーの力を効果的に活用していくことをおすすめします。

ライタープロフィール

高橋 守
高橋 守株式会社エム・エー・ディー
・2007-現在:(株)エム・エー・ディー
EC-CUBEをベースにした通販事業のビジネス構築やデジタル化を支援
中小企業診断士/JMAA認定M&Aアドバイザー

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