「EC×DX特別対談」~DX推進におけるECはますます重要になる。政府CIO補佐官がEC-CUBEにジョインしたわけ~

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2020年11月13日、「ECを中心としたDX」を全国企業に広く推進していくことを目的に、組織の変革(DX)、新規事業・新規サービス開発を事業で展開する株式会社レッドジャーニーの代表取締役社長で政府CIO補佐官でもある市谷 聡啓氏が株式会社イーシーキューブのDX推進アドバイザーに就任したことが発表されました。

今回のインタビューは、そんな市谷氏と株式会社イーシーキューブ 取締役社長 金陽信との対談から、今回のDX推進アドバイザー就任の背景や意図を聞きました。

インタビュアーは株式会社イーシーキューブの梶原です。

  • 市谷 聡啓
    株式会社レッドジャーニー
    代表取締役社長 / 政府CIO補佐官
    市谷 聡啓
  • 金 陽信
    株式会社イーシーキューブ
    取締役社長 CEO
    金 陽信
  • 梶原 直樹
    株式会社イーシーキューブ
    取締役 CCO
    梶原 直樹

出会いのきっかけ

梶原 直樹梶原

本日はよろしくお願いします。
今回はDX推進アドバイザーの就任に関して、時代背景やお互いの状況など含めたところから、その意図、今後の展開まで掘り下げて聞いていきたいと思います。
とは言え少し順を追いながら聞いていきたいと思いますが、まずは出会いのきっかけって覚えてますか?

金 陽信陽信

正確には覚えてないですが、おそらく市谷さんがセミナーで登壇しているところに、僕が聞きに行った、というところからだったと思いますね。

市谷 聡啓市谷

そうですね。色々僕も登壇していますし、どこだったか。デブサミ(Developers Summitの略)やデブラブ(DevLOVE)、アジャイルカンファレンスとか。もしかしたら大阪ではなくて東京だったかもしれないですね。

金 陽信陽信

セミナーで会うような関係から、がっつり話をするようになったのは市谷さんが代表を勤められていた会社にEC-CUBEのプロジェクトや開発進行に関する現場コーチのサポートを依頼したところからですね。

市谷 聡啓市谷

僕はその依頼していただいてサポートしている中で、EC-CUBEのことや、eコマースのこと、陽信さんが悩んでることまで色々聞いたりしましたね。EC-CUBEに軽く興味を持ちだしたのはそこぐらいからだったと思います。

梶原 直樹梶原

セミナーで出会って、プロジェクト進行の手伝いの仕事依頼をした、あたりから距離が縮まってきたということですね。ただ、この時はまだ、仕事の依頼をして、受けるような関係性だったと。

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ジョインするような関係に至る経緯

梶原 直樹梶原

そんな関係から、今回イーシーキューブにジョインしていただくという、大きく関係性が進んでいくことになったわけですが、そこに至るまでに何か気持ちの変化するような例えばイベントみたいなことがあったんですか?

市谷 聡啓市谷

まず、2年ほど前までは実はまだ、一緒に何かやるようなイメージはなかったんです。その時はまだイーシーキューブ社では、EC-CUBEのクラウド版を開発していたところだったと思いますが、インストールが簡単にできるEC-CUBEを作ってます、ぐらいの感じだったんですね。でも僕は、それを運用で実際に使っているような店舗側の運用者の課題解決や、更にはその先にいる物を買う人を見据えたようなことに興味があったので、そういう意味ではやっていきたい方向性が少し違うのかなという感じで、正直、距離を置こうと思っていました。

梶原 直樹梶原

2年前でも、まだ距離があったわけですね。

市谷 聡啓市谷

そこから少し経って、今のコロナ禍に入ってからぐらいですね、状況や心境が変わったのは。このあたりの時に、改めて話をするきっかけがありました。今、僕は政府CIO補佐官をやっているわけですけど、コロナ禍に入る前から企業へのDXを推進する取り組みをやっています。今問題になっているのは、地方の跡継ぎ問題とかECを使って新しいビジネスをしたいとかそういう話が急務な状況になっています。その中で、僕もECのサポートを具体的にやっていますが、例えば冷蔵・冷凍の区分を管理したりとか、結構企業にとっては基本の部分がECプラットフォーム側では対応できてなかったりするわけですね。やるとしても、ものすごくお金がかかってしまったりとか。ECに関してはまだまだ課題だらけで、どのプラットフォームを選んでそれを解決すれば良いかもわからない。そんな悩みを抱えてたわけですが、ふと陽信さんに、現状のEC構築市場とかそういう話を聞いてみようかなと思ったことがきっかけで、久しぶりに話をする機会ができました。

梶原 直樹梶原

コロナ禍ということなので、今年の春以降ぐらいの出来事ですね。市谷さんにプロジェクトのサポートをしていただいていたころから1年半ぐらいは経っていましたよね。

市谷 聡啓市谷

そうですね。久々にお話して、そしてその時、現状のECプラットフォームやEC構築市場の話を陽信さんから聞いて、とても勉強になりました。逆に陽信さんも色々今後の方向性とかの悩みを抱えていたみたいなので、その相談にのったりとか。

金 陽信陽信

その時は、急にEC構築市場のことが聞きたいとかメッセージが来たから何事かと思いましたが、結構話が盛り上がって、ECの話をしたり、事業や会社の悩みに関して壁打ち相手になってもらったりで、1か月ぐらいは毎週のように話す機会を持たせてもらってました。

梶原 直樹梶原

お互いの壁打ちを1か月にわたってやっていたという感じですね。

金 陽信陽信

2020年10月からイーシーキューブとして新しい期に入るにあたり、これまでのEC-CUBEのビジネスからの変革をはかろうとしていたことと、市谷さんが描いていた中小企業に向けたDX支援ということとが、その話合いを進める中で上手く合致したこともあり、一緒にやっていきましょうと、そんな話が自然とでてきた感じです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

梶原 直樹梶原

ちょこちょことDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が出てきていますが、、少し話題を変えまして、そもそもDXとは?というところから、ECとDXというところも聞いていきたいのですが、まずここは市谷さんにお伺いいたしますが、DXって一言で言うとどういうことなんでしょうか?

市谷 聡啓市谷

一言で言うと「顧客体験の再定義」をすることだと考えています。単にアナログからデジタルへとか、新しい製品を導入するとか、DXはそういうことではなく、これから顧客の体験が変わっていく、もしくは顧客の体験を変えていくためにどうするか、DXにはそういう狙いがあると思います。
そして、これは、コロナ禍と結びつきが非常につよくて、コロナというのはもちろん良いものではないわけですが、急激に顧客体験の変革を迫られるという前向きに変わる、そんなきっかけになっていると感じています。これまで対面が普通だったことから非対面・オンライン対応への切り替えを否応なしに迫られた。コロナ以前からDXというのが言われていましたが、その対応へのスピード感、重要性が極端に上がって急務になってきていると思います。

金 陽信陽信

ECの話で絞って言うと、単純なネットショッピングというところから、リアルとオンラインを含めたショッピング体験をどのように変えていけるか、バックヤード側では、商品掲載後に、購入されて、お届けする、更にリピート購入していたくといった一連のオペレーションもどのように変えていけるか。そういった総合的な話になってきていると感じます。BtoBにしろ、BtoCにしろ、商取引はビジネスの基本ですし、それがデジタル化されたECはDXの中心といっても過言ではないですよね。

梶原 直樹梶原

市谷さんは地方の中小企業向けにDXを推進しているとのことですが、地方の企業にとってもDXというのは今急務になってきているんですか?

市谷 聡啓市谷

地方のメーカー企業と仕事をしていますが、日本の商習慣的には卸⇒卸⇒代理店⇒エンドユーザー のような流れで上手く回してきているというのがこれまでの流通の大きな流れだったと思います。しかし、今はもうとっくにネット中心の社会に移行していて、これまでの流れがずいぶん変わってきている一方、地方ではまだこれから向き合あおうとしているような状況です。
今までの商習慣のままだと、エンドの顧客からフィードバックを得て商品を改善しようとした時に、メーカーから顧客までの間が長すぎる、つまりフィードバックまでのループが非常に長い。もしかすると、顧客が小売店にフィードバックをしても、その商品を製造しているメーカーまでには複数ステップを経なければならず、メーカーは自分たちが作っている商品が、誰がどんなニーズで買っているのかは全く分かっていないかもしれません。特に地方ではまだまだそういった状況が続いており、解決していかなければいけません。
顧客体験の再定義をするということは、このフィードバックループを縮めるようなことをやっていくからこそできることだと思います。

金 陽信陽信

まさにその通りで、最近はD2C(ダイレクトとコマース)という言葉もありますが、メーカーが直接、ECを通じてユーザーに物を売ってみる。そして、それだけではなく自社の顧客として継続的か関係が築いていけるかが非常に大きなカギになっていると思います。顧客との関係性の近さが重要なんです。

市谷 聡啓市谷

どの方向に向いて仕事をするかも変わってきます。例えば特に地方はその傾向が強いと思いますが、小売りの力がめちゃくちゃ強い。頭が上がらないこともあるかもしれない。そうなると、メーカーとしてはどうやって売り場に置いてもらうか、小売りに対して営業をするようなビジネスになるわけです。
でも、顧客体験の再定義をするにあたっては、実際にモノと購入していただくエンドユーザーを見た方が良い。どういう人がどういうつもりで買っているか、それを自分たちで知って改善やビジネスモデルの変革をしていくことが重要で、今は地方の中小企業でもそんなDXをしていきたいと思っている方は多いと感じています。
その一方で、そういった変革をしていくのは、何をどうしていけばそんなことができるのかが良くわからないわけです。軽くECをやってみるようなことまではできるけど、そのフィードバックループをどう回すのかが分からない。結局ECをとりあえずやってみただけになりがちという、そんな状況も多いと思います。

市谷 聡啓市谷

でも、その一方で、その変革をしていくのは、何をどうしていけばそんなことができるのかが良くわからないわけです。軽くECをやってみるようなことまではできるけど、結局そのフィードバックループをどう回すのかが分からない。結局ECをとりあえずやってみただけになりがちというかそんな状況も多いと思います。

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EC-CUBEに期待する役割

梶原 直樹梶原

DXについてや地方の現状も非常に良くわかりました。そんな状況だからこそ、市谷さんもEC-CUBEに注目をしていただき、EC-CUBEならば市谷さんが描くビジョンを形にできる、そんな期待値を持ってジョインしていただいたと思うのですが、具体的にはこのECを中心としたDXを推進していくにあたり、EC-CUBEに期待していること、とはどんなところでしょうか?

市谷 聡啓市谷

それは2点あると思っています。まず1点目はEC-CUBEというのは「想いを表現できる」プロダクトであるということです。
モノづくりというのは、自分たちの商品をいかに表現するかというのが非常に重要だと思います。例えば、食品系で言うと、無添加でやっていたとして、それがどういう想いからきているのか。多くの商品から自社の商品を購入いただくためには納得感というものが必要です。そこで、伝えるべきは、その無添加という結論にいたるまでに時間をかけてそこにたどり着いた経緯や想いだったり、もしくは会社の理念だったりがあるわけです。ただ、商品を登録して単純に売るというECをやっただけではそれは届きません。そのコンセプトやストーリーをちゃんと表現して、お客様に共感していただけないと、このモノが余っている状況では選ばれない。
その想いを表現できる力がEC-CUBEには備わっている。EC-CUBEはオープンソースとしてリリースされてから一貫して「ECに色を」というショップのオリジナリティをとことん追及できるというコンセプトを貫いてきているわけで、単純にECを作ることができるASP等のSaaS系サービスよりも、今後の時代でフィットする考え方だと思います。

市谷 聡啓市谷

それと、2点目は「透明性」というかオープンであるということでしょうか。
EC-CUBEを開発する姿勢が、コミュニティやパートナー、もしくは店舗と会話しながら、なるべく調和を考え、結構気を使いながら開発しているというか。議論をオープンにしながら、みんなの意見や要望に沿った開発、運営をしている、そんな姿勢は他のサービスではなかなか見られない光景かなと感じています。お付き合いしている中でも感じていましたが、使っていただく方のことを考えて、もしくは使っていただく方と「一緒に」作っていく、そんなサービスの在り方自体に共感しているところがあるんです。

金 陽信陽信

「一緒に」作る、という意味では今、重要な時期に差し掛かっているかもしれません。システム開発のトレンドも急激に変化していこうとしています。これからは、ECを構築するWeb制作会社も店舗と、いかに長く寄り添っていけるかが重要になってくると思います。ECというのは作って終わりではなく、商売を始めた後が本当の勝負で、オープン後でも常に店舗を作り変えていかいといかないし、他社との差別化を「一緒に」作り替えていけるパートナーでないといけない。
これまで、EC-CUBEはWeb構築部分を主に見てきているのですが、クラウド版の「ec-cube.co」は店舗にずっと寄り添っていけることを目指したサービスですし、今まさに僕たちもEC-CUBEを変革させようとしている最中です。そして僕たちだけではなく、制作会社のパートナーと「一緒に」、日本のWeb制作、システム構築、そしてクライアントとのオープンで継続的な関係性を築いていけるような、そんな変革をしていく時期にきていると思っています。

市谷 聡啓市谷

プラットフォームの中には、サイトを作る人、デザインする人、コンサルする人、いろんな人がいますよね。それを総合的に支援し、つながりを作ることがプラットフォーマーの役割だと思います。そのプラットフォーム内のつながりが結果的にはEC-CUBEを活用する店舗にとってのメリットになる。
プラットフォーム上で、店舗が共に歩んでいけるパートナーと出会って、そしてパートナーも店舗もWin-Winな関係性を作り上げていく。EC-CUBEならではの本当に面白い世界観ですよね。

市谷さんがEC-CUBEにジョイン後の今後の展開

梶原 直樹梶原

最後の質問になりますが、今後の展開、未来の展望・野望みたいなところを教えてください。

金 陽信陽信

ECというのは結構幅広い。自分たちのショップを表現するフロントの部分をどう見せていくか、そしてその裏には実際の業務を行うバックヤード部分があって、それをどう効率化していくか、様々な課題があります。更には、その先にモノを買ってくれるユーザーがいて、買っていただいた後のフィードバックをどう回すかとかなど考え始めると、本当に幅が広く深くなっているわけで、本当に難しい。
この幅の広い様々な課題がある中で、どこかの制作会社に丸投げするとか、もしくは依頼側に見せ方・業務効率化など全ての仕様を決めてもらうといった進め方だと、やはり上手くいきません。

金 陽信陽信

だから、そこは得意な企業、人とが強力しあってビジネスをしていけるようなそんなプラットフォームを目指していきたいと思っています。そのより良い組み合わせ、マッチングができるような仕組みも重要になってくると思います。
そういった、仕組み、ビジネスの流れ、企業のDXをパートナーの方々と共に寄り添いながら進めていけるか、そんなことを市谷さんと一緒にチャレンジしていきたいと考えています。

市谷 聡啓市谷

EC-CUBEには越境ECをしていただきたいなと。
それは、海外へモノを売るとかそういう越境ではありません。物事には境界というのがありますよね。これは開発者向けのビジネスです、となるとサービスはそれ以上の壁を超えていかない。これから大切になるのは、より良い価値を生み出すために、人が認識しているその境目を超えていくことなんではないかと思います。
作る人、運営する人、買う人にいかに踏み込んでいけるか、そんなテーマって、EC-CUBEらしいと思いませんか?オープンに、いろんな人たちとその壁と超えて一緒に世界を変えていける、そういう意味での「越境EC」ということです。

金 陽信陽信

EC-CUBEで日本の企業の力を、いろんな方々と一緒に伸ばしていきたいという思いはずっと同じです。ぜひ、越境していきましょう!

終わり